2023年10月の法改正により、エアコン設置に伴う壁の穴あけ工事にもアスベスト(石綿)の事前調査義務が適用されるようになりました。この記事では、調査が必要なケース・不要なケースの判断基準から、調査の具体的な流れ・費用・資格要件まで、2026年時点の最新ルールをもとに解説します。
目次
エアコン工事にアスベスト調査が必要になった理由
エアコンの設置や移設は、一見すると小規模な作業に見えます。しかし壁に配管用の穴(スリーブ穴)を新たに開ける工事は、建材を物理的に粉砕する行為です。そこにアスベスト含有建材が使われていれば、粉じんが確実に飛散します。
アスベストが危険な理由
アスベスト(石綿)とは、天然に産出する繊維状のケイ酸塩鉱物の総称です。優れた耐熱性・断熱性・防音性を持ち、1960年代から2000年代初頭にかけて建築材料として広く使われました。外壁や断熱材、天井の吹付け材、床材など、さまざまな部位に使用されています。
危険性が問題になるのは、アスベストの繊維が空気中に飛散して吸い込まれたときです。肺に入った繊維は体外に排出されず、長年にわたって肺組織を傷つけ続けます。
アスベストの危険性が社会問題として認識された結果、日本ではアスベストを含有する製品の製造・使用・販売が原則として全面禁止されました。
アスベスト工事が必要になった理由
アスベストの事前調査は、規模や請負金額にかかわらずすべての解体・改修工事での事前調査が義務化されています。そして2023年10月1日の改正施行により、「有資格者」による事前調査が必須となりました。
エアコン設置に伴う壁への穴あけ(コア抜き)は、直径60〜100mm程度の穴を開ける工事です。壁材にアスベストが含まれていれば、穴あけの瞬間に粉じんが飛散し、作業員だけでなく室内に居る家族や近隣住民も吸い込むリスクがあります。
この飛散リスクを事前に確認し、必要な対策を取ることが調査義務化の目的です。
調査が必要な工事・不要な工事
調査が必要かどうかは、「建物の着工日」と「工事の内容」の2軸で判断します。この基準を正しく理解しておくと、施工業者とのやり取りもスムーズになります。
調査が必要になる3つのパターン
エアコン工事の際、アスベスト調査が必要になるのは、2006年9月1日よりも前に着工した建物で穴あけを行う場合、過去の増改築でアスベスト含有建材が使用されている可能性がある場合です。
2006年9月1日以前に建設された建物には、壁材・断熱材・吹付け材などにアスベストが含まれている可能性があります。特に1970〜1990年代に建てられた建物はアスベスト含有率が高い傾向にあり、穴あけ工事の前には必ず調査が必要です。
ただし、着工日を書面で確認できない建物で穴あけを行う場合もアスベスト調査が必要です。「2006年以降の建物だから調査は不要」と判断するには、設計図書などの書面で着工日を証明できることが前提です。建築確認通知書・検査済証・登記簿謄本・建築台帳記載事項証明書などで確認できない場合は、安全側で「調査が必要」として扱います。
また、過去の増改築でアスベスト含有建材が使用されている可能性がある場合もアスベスト調査が必要です。増改築部分が2006年以前に施工されているケースがあるため、改修履歴も合わせて確認する必要があります。
調査が不要になる3つの条件
調査義務があるとはいえ、条件を満たせばすべての調査手順を省略できる場合もあります。調査が不要になるのは、書面で2006年9月1日以降の着工が確認できる建物、既存の配管穴をそのまま使用する場合、明らかにアスベストが含まれない建材のみで構成された壁です。
アスベストは2006年9月1日以降に全面禁止されているため、この日以降に着工された建物にはアスベスト含有建材が使われていないと判断されます。重要なのは「竣工日(完成日)」ではなく「着工日」である点です。
また、既設の配管穴を流用するだけで新たに穴を開けない場合は、建材への損傷が発生しないため、調査は不要です。同じ穴を使う単純なエアコンの付け替えや室外機の交換のみであれば、この条件に該当します。
明らかにアスベストが含まれない建材のみで構成された壁であれば、アスベスト調査が不要です。木材のみで構成されているなど、建材の種類・仕様から明らかにアスベストが含まれないと判断できる場合は、目視・分析調査を省略できます。
ただし「明らかに含まれない」という判断自体は、専門的な知識が必要です。自己判断でこの条件を適用することはリスクがあるので注意しましょう。
調査の流れ・費用・資格要件
実際に調査が必要とわかった場合、どのような手順で進むのかを把握しておくと対応がスムーズです。
事前調査4ステップの具体的な流れ
アスベスト調査は、まず書面調査から行われます。確認するのは、建築確認通知書・竣工図・設計仕様書・過去の改修記録などです。着工日が2006年9月1日以降であることが書面で確認できれば、ステップ2・3を省略して事前調査報告書の作成に進めます。
次は現地調査です。書面調査だけではアスベストの有無を断定できない場合、有資格者が現地を訪問して目視で確認します。穴を開ける予定の外壁・内壁・天井裏などの建材について、材質・設置状況・劣化の程度を確認します。
目視調査でアスベスト含有の可能性が否定できない建材については、分析調査で実際に試料を採取して分析します。試料の採取は飛散リスクを伴うため、湿潤化処理や防護具の着用など安全管理措置が必要です。
採取した試料は、国に登録された「登録分析機関」に送付して専門分析を行い、アスベストの種類と含有率を確定します。
調査結果は「石綿事前調査結果報告システム(環境省)」を通じて、都道府県等と労働基準監督署の両方に電子報告する義務があります。報告については、検査をした業者に確認しておくと安心です。
調査費用の相場と「アスベストが見つかった場合」の追加費用
事前調査の費用は、依頼先や建物の条件によって幅があります。書面調査・目視調査の費用は、5,500〜2万円程度が相場です。独立した専門業者に依頼する場合や、規模の大きい建物では3万〜5万円程度かかることもあります。
目視調査でアスベスト含有の可能性が残った場合、試料を採取して分析します。分析費用は3万円前後が相場です。採取する試料の点数が増えるほど費用も増加します。
調査の結果、アスベストが確認された場合は追加の対策工事が必要です。家電量販店の標準的な石綿対策工事では、1万1,000〜1万3,200円程度が設定されています。
アスベスト工事では、穴あけ時の粉じんが飛散しないよう養生・局所排気・湿潤化処理などの措置を取り、施工後に周辺の清掃を行います。工事の費用はエアコン本体の購入・設置費用とは別途かかります。工事前に業者から費用の説明を受け、条件をしっかり確認しておくことが大切です。
調査を担える有資格者の種類と業者選びの判断基準
2023年10月以降、アスベストの事前調査は有資格者でなければ実施できません。アスベスト調査を依頼するときは「建築物石綿含有建材調査者」の資格を持つ担当者がいるかを確認しましょう。口頭だけでなく、資格証のコピーや証明書の提示を求めることが安心です。
また、分析から報告まで一貫対応できるかの確認をしておくと安心です。書面調査・目視調査・分析調査・報告書作成まで一括で対応できる業者であれば、手続きの手間を避けられます。
「調査不要」と言われた場合でも、根拠を必ず業者から説明してもらいましょう。根拠が曖昧なまま「不要」と判断されると、法令違反のリスクが工事発注者にも及ぶ可能性があります。
まとめ
エアコン工事を業者に依頼する前に、自宅の着工日を確認できる書類を手元に用意しておくと、調査の必要・不要をスムーズに判断できます。不明な点は施工業者や専門の調査機関に相談するようにしましょう。
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引用元:https://northk.jp/lp/