アスベストは、これまでさまざまな建材に使われてきました。しかし、その繊維を吸い込むと、病気を引き起こすリスクがあることが明らかになっています。このため、アスベストによる健康被害を防ぐために、法律による規制が強化されてきました。そこで本記事では、2026年1月に施行された工作物のアスベスト事前調査資格についてまとめています。ぜひ参考にしてください。
目次
アスベスト事前調査とは
これまで「経過措置」として猶予されていた規制が、2026年1月1日より大幅に変更されました。2026年以降は、有資格者以外による調査は認められていないので、実施する際は注意が必要です。
ここでは、アスベスト事前調査の基礎と変更点などを紹介します。
2021年4月1日から法律で義務付けられている
アスベスト調査とは、建物を解体・改修する際に必要な調査です。2021年4月1日より法律で義務付けられ、すべての工事において原則必須となっています。また、調査を実施するには、資格を有している者でなければいけません。
万が一調査を行わずに工事を行うと、極めて重い罰則や社会的制裁を受けることになります。
たとえば、大気汚染防止法や石綿障害予防規則の場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金/6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金などが科され、行政から工事の一時停止命令が出されます。
現場の責任者個人にも適用されるため、非常にリスクが大きいでしょう。
調査が必要な理由
アスベスト事前調査が必要になる理由は、人体への健康被害が大きく関係しています。目に見えない小さな繊維は、体内に入るとさまざまな病気を引き起こします。
潜伏期間が長くなるほど重症化リスクも高まるため、解体・改修工事をする際はアスベスト事前調査が必要不可欠です。
しかし一方で、調査が不要な場合もあります。たとえば、建材に影響を与えない作業やアスベストを含んでいないと証明できる作業です。建材に影響のない作業とは、釘を打ったり、アンカーを差し込んだりなどが挙げられます。
2006年9月1日以降に着工した建物についても、設計図書などで確認できる場合に限り、調査の省略が可能です。
変更される点
もっとも大きな変更点は「調査を行う人物」の厳格化です。これまでは、経過措置があり、一定の知識を有していれば調査が可能でした。
しかし2026年1月1日以降は「工作物石綿事前調査者」でなければ調査を行うことはできません。要するに、有資格者以外の調査は原則禁止されています。
建築物の資格では調査はむずかしい?
注意したいのが、建築物の資格があれば調査できるという誤解です。法律上、建築物と工作物は大きく区分されており、ビルや住宅用の資格を持っていても特定工作物の調査は行えません。
対象となる工作物は、反応槽・加熱炉・圧力容器・配管設備・焼却設備・貯蔵設備などです。発電や変電などの設備も、工作物の有資格者でなければ調査不可です。
対象となる「工作物」
アスベスト事前調査の対象となる「工作物」は、建築物以外です。アスベストの危険性に応じて、特定工作物と特定工作物以外の工作物にわけられ、これらは調査の必要範囲も異なります。
特定工作物
特定工作物とは、石綿使用の危険性が高いものを指します。厚生労働大臣および環境大臣が定めた工作物が対象となり、解体等を行う際は必ず資格者が実施しなければいけません。
対象工作物は「建築物の資格では調査はむずかしい?」にも記載しているとおり、反応槽・加熱炉・圧力容器・配管設備・焼却設備などです。
一方で、煙突やトンネルの天井板、プラットホームの上家などは、工作物石綿事前調査者以外の一般建築物石綿含有建材調査者/特定建築物石綿含有建材調査者でも調査が行えます。2023年9月までに、日本アスベスト調査診断協会に登録した者も対象となります。
特定工作物以外の工作物
特定工作物以外の工作物とは、原則として有資格者の調査は求めません。しかし、例外もあるため注意が必要です。
調査が必要となるのは、石綿含有の恐れがある塗料を除去する作業です。危険性が高いため、必ず有資格者が調査を行います。
調査資格を取得するには
2026年1月1日以降に工作物の解体等を行う際は、事前に資格を取得しておく必要があります。各事業所に有資格者を在籍させておくことも大切です。
ここでは、調査資格の種類と役割について解説します。
調査資格の種類
ひと口にアスベスト事前調査の資格といっても、種類はさまざまです。2026年1月1日以降は「工作物石綿事前調査者」の資格も必要ですが、それ以外にも以下のような資格が存在します。
1つ目は、建築物石綿含有建材調査者です。2023年10月1日に義務化され、建築物のアスベスト含有建材の調査を行います。
国家資格のため、試験に合格する必要があり、石綿作業主任者技能講習を修了すると「建築物石綿含有建材調査に関する基礎知識1」が免除されます。
また、建築物石綿含有建材調査者は、一般建築物石綿含有建材調査者・特定建築物石綿含有建材調査者・一戸建て等石綿含有建材調査者に区分され、それぞれ条件が異なるので注意が必要です。
2つ目は、特定工作物石綿含有建材調査者です。工作物石綿事前調査者と同様、新しく義務化された資格ですが、工作物の種類に制限はありません。資格を取得するには、登録講習機関の「工作物石綿事前調査者講習」を受講・修了する必要があります。
工作物の種類に制限がある場合は「工作物石綿事前調査者」の資格が必須です。この資格は、工作物における石綿含有の有無を正しく調査するために欠かせません。さらに、講習を受講するには「一定条件」をクリアする必要があります。
誰でも受講できるわけではないので、事前にしっかり確認しておきましょう。
受講できる場所は、登録講習機関や民間の登録講習機関です。前者は、工作物石綿事前調査者講習のプログラムを提供しており、2024年2月1日の時点で125機関あります。
後者は、一般社団法人や公益社団法人のほかに、民間の教育機関でも受講が可能です。通学方式で2日間のカリキュラムになっており、スムーズに合格できれば早く資格を取得できます。
調査資格の役割
調査の有無を判断するためには、目的と手順を理解しておく必要があります。まず、調査を行う目的は、建築物の解体・改修工事にあたり、人体に悪影響を及ぼす石綿が含まれているかどうかです。
工事を行ううえで重要な工程のひとつになるため、調査を怠ると罰則を受けることになります。手順は、大きく4つにわけられます。
1つ目は、書面調査です。建築物の設計図や施工記録などを参考に、アスベストの有無を調査します。
2つ目は、目視調査です。書面調査の結果をもとに直接現地に出向き、目視で調査を行います。建築物の外観や内部を観察し、含有の疑いがある建材を特定するのが目的です。書面だけでは確認できなかった部分の情報が得られる場合もあります。
3つ目は、分析調査です。書面や目視では含有の判別ができなかった場合に実施されます。建材のサンプルを採取したら、専門の分析機関で確認し、0.1%(重量比)を超えるアスベストが含まれていると含有率(%)を分析します。
4つ目は、報告書の作成です。調査結果として、アスベストが含まれていた建材と含まれていない建材が記載されており、今後の工事において重要な資料となります。
事前調査の注意点
調査を行ううえでの注意点は、構造物に対する広い知識とリスクに対する判断力です。建築物の解体・改修工事には、すでに有資格者の実施が義務付けられていますが、対象物のなかには施工図書が残っていないものもあるため、十分注意して調査を行いましょう。
まとめ
2026年1月1日より、アスベスト事前調査を行う際に資格が必須となりました。2025年までに経過措置として猶予されていた規制も、工作物石綿事前調査者以外の調査が認められません。万が一無資格者が調査を行ってしまうと、法令違反(大気汚染防止法および石綿障害予防規則)となるため、十分注意が必要です。作業に従事する人々の安全と健康、周辺環境を配慮するために、適切に対応していくことが重要になるでしょう。
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引用元:https://northk.jp/lp/