
アスベスト調査は、工事者や住民の健康・安全を守るために欠かせないプロセスです。しかし「アスベストの事前調査が不要なケース」も一定数存在することをご存じでしょうか。本記事では、アスベストの事前調査が不要なケースをはじめ、事前調査の流れやみなし判定を行う場合の注意点までまとめて解説します。
目次
アスベストの事前調査の流れ
アスベスト事前調査は、解体工事や修繕工事、建築設備の取り付けや取り外しなどを行う際に欠かせない重要な工程の一つです。
調査の目的は、建築物に使用されている建材にアスベストが含まれているかどうかを事前に把握し、安全かつ適切な工事を実施するための基礎資料を得ることにあります。
不要なコストや工期の延長を防ぐためにも、調査の手順を正しく理解しておくことが大切です。調査は大きく4つの段階で進められます。
書面調査
最初に行われるのが「書面調査」です。建築物の設計図や施工記録を確認し、アスベスト使用の可能性がある箇所を特定します。
目視調査
次に「目視調査」が実施されます。現地で建物の内部や外観を直接観察し、書面調査では把握できなかった疑わしい部分を確認する流れです。
分析調査
上記2つの調査ではアスベスト含有の有無を確定できない場合もあり、その際は「分析調査」が必要となります。分析調査では、建材のサンプルを採取して専門機関で検査を行い、重量比で0.1%を超えるアスベストが含まれているかを判断します。
報告書の作成
最終段階では「報告書の作成」が行われます。書面・目視・分析調査の結果を反映させた資料がまとめられます。この報告書は、今後の工事における安全対策や処理方法を決定する上で欠かせない情報となるでしょう。
アスベストの事前調査が不要なケース
上記では、アスベスト調査の必要性や流れについて詳しく紹介しました。一方で、例外的に調査が不要となるケースも存在します。ただし、その範囲は非常に限定的といえます。
アスベストが含有素材を使用していないことが明らかな場合
第一に、アスベストを含有していないことが明らかな素材を扱う場合は、調査を行う必要がありません。具体的には、木材、金属、石、ガラスといった素材や、畳や電球などアスベストとは無縁の製品が該当します。
ただし、これらの除去作業中に周囲の建材を損傷させる可能性がある場合、その周囲にアスベストが含まれている懸念が生じるため、調査が必要となることもあります。
アスベストの飛散の恐れがない場合
次に、作業がごく軽微であり、アスベストが飛散する恐れのない場合も調査は不要とされます。例えば、釘を抜いたり釘を打ったりする程度の工事であれば、材料への影響は限定的であり飛散リスクはほぼないため対象外となります。
既存の建材を傷つけない場合
さらに、既存の建材を傷つけることなく追加作業を行う場合も調査不要の対象となる。代表的な例が、既存の塗装面の上から新たに塗装を重ねる場合や、建材の上に追加で材料を貼り付ける場合です。
この場合、既存のアスベスト含有建材を損傷させる可能性がないため調査の必要性はありません。ただし、既存塗装の剥離や外壁にアンカーを打ち込む作業などは、少なからず建材に影響を与えるため、飛散リスクが発生して調査の対象となる。
アスベストのみなし判定を行う場合の注意点
建築物の解体や改修工事においては、アスベストの有無を確認するために分析調査を行うのが一般的です。しかし、場合によっては「みなし判定」という手法が用いられることがあります。
みなし判定とは、専門機関によるサンプル分析を実施せずに、対象となる建材をアスベストを含有しているものとみなして取り扱う方法です。
この制度は厚生労働省が定める関連法規に基づいて認められており、分析を省略しても、アスベストを含んでいる前提で安全管理や健康保護の措置を講じることができます。結果として、分析にかかる時間やコストを削減しつつも、労働者や周囲の人々の安全を確保できる点が特徴です。
ただし、みなし判定を行う場合でも、必要な調査手順の一部を省略できるわけではありません。まず、建築物の設計図や施工履歴を確認する「書面調査」、さらに現地での「目視調査」は欠かせず、これらを通じてアスベストの可能性がある建材を洗い出す必要があります。
そのうえで、みなし判定を採用する場合には、調査結果をまとめた報告書を作成し、適切に提出しなければなりません。報告義務を怠った場合には、行政からの指導や罰則の対象となります。
まとめ
アスベスト調査は、工事に関わる人々や住民の健康を守るために欠かせない工程ですが、全ての工事に必ずしも必要というわけではありません。木材や金属などアスベストを含まない素材を扱う場合や、釘抜きのように極めて軽微な作業、既存の建材を傷つけない追加作業など、ごく限られたケースでは事前調査を省略できます。ただし、その範囲は限定的であり、判断を誤れば重大なリスクにつながります。また、分析調査を省略し、対象建材をアスベスト含有とみなす「みなし判定」という方法もありますが、この場合でも書面調査・目視調査・報告書作成は必須です。調査の流れや不要なケース、みなし判定の扱いを正しく理解することが、安心で安全な工事の第一歩となるのです。
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引用元:https://northk.jp/lp/