アスベストの「定性分析」「定量分析」の違いとは?

公開日:2024/02/15 最終更新日:2024/03/12
アスベストの「定性分析」「定量分析」の違いとは?

2022年4月から建物を解体するときやリフォームするときは、事前にアスベストが含まれているかを調査し、調査結果の報告が義務化されました。ただ、アスベスト調査といっても、「定性分析」「定量分析」があり、どういった方法で調査するのかわからない方もいるでしょう。そこで、それぞれの分析方法の違いについて解説します。

「定性分析」とは

アスベストの含有調査では、大きく分けて「定性分析」「定量分析」の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。定性分析は、アスベストが含まれているかどうかを確認するための分析です。

そのため、定性分析を実施したとしても、どれくらいの量のアスベストが含まれているかは確認できません。しかし、定性分析さえ行えば、建物にアスベストが含まれているかどうかを判断できます。

したがって、法律で規定されているアスベスト調査においては、定性分析を行っておけば、問題ありません。もちろんより精度の高いデータが必要な場合や、アスベスト含有量を確認しなければならない案件の場合は、定性分析では不十分であります。

ただ、2022年4月から義務化されたアスベストの調査結果の義務については、ひとまず定性分析だけで問題ないでしょう。なお、定性分析の具体的な方法は主に2つあります。

1つ目は、「JIS A 1481-1」であり、偏光顕微鏡や実体顕微鏡を使って、対象物の形や特性を確認することで、アスベストの有無を調査する方法です。

そして、2つ目は「JIS A 1481-2」というもので、X線解析装置や位相差分散顕微鏡を使ってアスベストの有無を調査します。ただ、2つ目の方法の場合、調査する対象物を粉砕しなければならないことから、現場や状況によっては実施が難しいでしょう。

「定量分析」とは

アスベストの調査結果の義務については、定性分析だけで問題なく、一般的には定量分析はしなくてもよいとされています。ただ、定量分析ではアスベストの含有量を調べられることから、補助的な指標として有効性があるでしょう。

定量分析では、「JIS A 1481-3」「JIS A 1481-4」「JIS A 1481-5」の3種類があり、それぞれ分析方法が異なります。「JIS A 1481-3」は、X線解析装置を使ってアスベストの含有率を調べる手法です。

一般的には、検量線作成と基底標準吸収補正法と呼ばれる方法を使い、分析します。また、「JIS A 1481-4」では、直接重量法と変更顕微鏡でポイントカウント法という手法を用います。

繊維計数を使うことで、アスベストの含有率を調べられるという仕組みです。そして、「JIS A 1481-5」は、国際規格であるISO22262-3を発展改良したものである、JIS規格に落とし込んだ方法です。

定量分析は、定性分析よりも特殊な装置が必要になったり、複雑な分析方法を用いたりしなければなりません。そのため、定性分析よりも調査結果が出るまでに時間がかかるだけでなく、費用がかかってしまいます。

とはいえ、定性分析よりも詳細な分析ができることから、どれくらいのアスベストが含まれているかを知りたい場合や、確認しなければならないケースにおいては、必須の分析方法といえるでしょう。

アスベスト分析の種類・特徴

建物を解体するときや、リフォーム、リノベーションするときは、事前にアスベスト調査を行い、調査結果を報告しなければなりません。その際、アスベストが含まれているかどうかを確認できる定性分析を実施するのが一般的です。

ただ、アスベスト分析には、定性分析だけでなく、含有率を調べられる定量分析というものがあります。先述の通り、定性分析は、より簡素的な分析方法であることから、そこまで時間と費用をかけずに実施することが可能です。

しかし、定量分析の場合、特殊な機械や装置を使う必要があるので、どうしても調査費用が高くなってしまいます。なお、アスベスト調査は、大きく分けて「JIS1」「JIS2」「JIS3」「JIS4」「JIS5」の5つがあります。

先ほど紹介した「JIS A 1481-1」が「JIS1」、「JIS A 1481-2」が「JIS2」、「JIS A 1481-3」が「JIS3」、「JIS A 1481-4」が「JIS4」、「JIS A 1481-5」が「JIS5」に分類されます。

アスベストの分析においては、JIS1が採用されるケースがほとんどです。JIS1はほかの分析方法よりも、比較的工程が少ないので、分析対象物があれば最短24時間で結果を出すことが可能です。

また、工程が少ない分、調査にかかる費用を抑えられるといったメリットもあるでしょう。もちろん、アスベスト調査がどのようなときに必要かによって、分析方法を変えることが大切です。

たとえば、アスベスト含有率を確認しなければならない場合は、定性分析であるJIS1などでは不十分であることから、必然的にJIS3などの定量分析を行わなければなりません。

まとめ

2022年4月より、建物を解体するときや、リフォーム、リノベーションするときは、事前にアスベスト調査を行うことが義務付けられました。ただ、ひとえにアスベスト調査といっても、さまざまな種類があり、それぞれ特徴や工程、費用に違いがあります。とはいえ、法律で定められているアスベスト調査については、定性分析だけで問題なく、比較的工程が少ないことから、短時間で調査結果が出るという特徴があります。もちろん、より詳しいデータが必要な場合は、アスベスト含有量を確認できる定量分析を行う必要があるでしょう。

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